2015年に機能性表示食品制度が開始され、腸内環境を整えることを表示する機能性表示食品が増えました。機能性表示食品という言葉を聞いたことがあっても、どのような制度なのか分からない人も少なくありません。まずは、機能性表示食品制度について解説します。
また、腸内環境を整えるといえば乳酸菌をイメージする人が多いです。そこで、乳酸菌の働きや乳酸菌以外で整腸作用のある成分についても紹介します。
健康食品には明確な定義はなく、健康を保つために良い食品とされるもの全般を指していると考えられます。そして健康食品は、海外では医薬品として使用されているものから、不当な医薬品を含むものまで実に様々なものが流通している状況です。
健康食品を正しく安全に使用するために、国は2001年から保健機能食品制度をスタートさせました。この制度は、これまで健康食品とされたビタミンやミネラルなどについて、国が定めた安全性や有効性に関する基準などを満たした食品は、機能を表示して販売しても良いというものです。
これまでの健機能食品制度として定められていたのが、特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品でした。トクホとは、商品そのものが個別に審査され許可されたものです。審査するのは国であり、信頼性がかなり高い食品といえます。
トクホは生体の機能などに影響を与える成分を含んでいて、血圧や血糖値などを正常に保つことを助けるのに役立つなどといった機能をうたうことが可能です。一方、栄養機能食品とは不足しがちな栄養素の補給や補完を目的としたもので、ビタミンやミネラルが対象となっています。
科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含んでいる食品であれば、届出などをしなくても国が定めた表現に従って表示することが可能です。具体的な例を1つ挙げると、ビタミンCは皮膚や粘膜の健康維持を助けるとともに抗酸化作用を示す栄養素です、などと表示することができます。
このように、機能性を表示することができる食品はトクホと栄養機能食品に限られていました。しかし、この2種類だけだと選択肢が限られるという声が挙がったのです。そこで、消費者にその機能性を分かりやすく示すことで選択肢を増やす必要が出てきました。
そうした背景もあって、2015年から新たに機能性表示食品制度が始まりました。
機能性表示食品制度とは、企業の責任のもとで科学的な根拠によって機能性を表示した食品です。この制度では商品を販売する前に、あらかじめ機能性の根拠に関する情報などを国に届けておく必要があります。ただし、個別に許可を得る必要はなく、その点がトクホと異なります。
2015年からスタートした機能性表示食品制度ですが、腸内環境を整える商品は数多く販売されています。それらはやはり乳酸菌が含まれたものです。2019年12月時点において、乳酸菌の種類としてこれまでに20種類を超える乳酸菌株が機能性表示食品として届出されました。
具体的にはビフィズス菌や乳酸菌シロタ株などが挙げられます。
ちなみに、乳酸菌といえば整腸作用というイメージがありますが、それ以外に関する機能性表示もあります。それは、内臓脂肪や尿酸値といった体調管理に関するものや、肌や歯茎などの組織機能の維持或いは改善に関するものです。
乳酸菌を含む機能性表示食品がたくさん出た影響もあり、乳酸菌イコール整腸作用というイメージを持つ人は増えています。そもそも乳酸菌とは一体何かといえば、糖を発酵させて乳酸を作り出す菌のことです。乳酸菌が生きたまま腸に届くと、乳酸菌はそこで乳酸を生成します。
乳酸が増えると、腸内は弱酸性に保たれるのです。弱酸性の環境というのは、善玉菌にとってはとても過ごしやすいものですが、悪玉菌にとっては非常に居心地の悪い環境です。すると、徐々に悪玉菌の数が減って、腸内細菌のバランスが改善されていきます。
このように腸内環境が整うことで、ヒトにとって有益な作用をもたらす微生物のことをプロバイオティクスと呼んでいます。ところで、腸内環境を整えるイコール便秘の改善、というイメージを持つ人が少なくありません。確かにそうかもしれませんが、実際はそれだけとは限りません。
腸内環境を整えるということは、便を適度な固さにして、気持ちの良い排便を促すことなのです。つまり、便が固すぎるときは柔らかく、逆に柔らかすぎるときはほどほどの固さに調節します。このことから乳酸菌入りの食品は、便秘がちなときだけではなく、下痢気味のときに使うこともあります。
下痢の原因が良く分からずに強い下痢止めを飲んでしまうよりも、乳酸菌入りの食品を摂って様子を見るケースも少なくないのです。
乳酸菌以外の腸内環境を整える機能がある成分としてはオリゴ糖が挙げられます。オリゴ糖とは、ブドウ糖や果糖などの単糖類が、2~十数個ほど結合された糖類のことです。ちなみに、オリゴとはギリシャ語で数が少ないという意味を表しています。
一口にオリゴ糖といっても、乳果オリゴや大豆オリゴ糖、ガラクオリゴ糖など、原料や結合している糖の種類によって実にたくさんの種類が存在するのです。糖消化吸収されにくいオリゴ糖は、そのままの形で大腸に到達し、ビフィズス菌などの栄養素となります。
ビフィズス菌などの善玉菌が増殖されれば、悪玉菌が住みにくい腸内環境を作ることが可能です。そのため、便秘がちな人に試してもらいたい成分の1つです。ちなみに、オリゴ糖には腸内環境を整える働き以外にも、様々な働きがあるといわれています。
例えば、オリゴ糖の1種であるフラクトオリゴ糖は、カルシウムやマグネシウムなどと一緒に摂取すると、それらの成分が吸収されやすくなります。また、コーヒーマンノオリゴ糖には、脂肪の吸収を抑える体脂肪を減らす作用があることも分かってきました。
消化されにくい性質があるため、一度に大量摂取すると下痢を起こす可能性があるので注意が必要です。それでも、腸内環境を整える成分として注目が集まっています。
世の中に健康食品があふれ出し、それらを正しく安全に使ってもらうために保健機能食品制度がスタートしました。
その後、制度の改良が進んで、2015年から機能性表示食品制度が開始されたのです。乳酸菌は腸内環境を整える機能性表示食品の代表的な成分ですが、実に20種類以上もの乳酸菌が登録されています。
乳酸菌だけではなく、オリゴ糖にも腸内環境を整える働きがあることは知っておくと良いです。